アースデイとやま

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アースデイとやま2020(リモート・アースデイ)

第I部 トークカフェの説明資料(要旨)

A. 歴史と生態から考える富山の野生生物との共存

横畑泰志(富山大学理学部・アースデイとやま2020実行委員会)

 富山県は優れた自然環境に恵まれているが、他の地域と同様に、野生動物と人間の間に人身被害、農林業被害、感染症の媒介などの様々な「野生動物問題」が存在する。その克服には、野生動物と人間の関係の歴史や、動物の生態に関する広範囲な理解が必要である。

【駆除個体の性比からみたクマとの共存】

 ツキノワグマの大量出没は2002年以降全国で頻繁に起こるようになり、富山県では特に大きな問題になってきた。低地で捕殺されたクマの性比は雄側に大きく偏っており、行動学的な性差によるものと考えられる。クマ類は特定のつがい関係の極めて希薄な「乱婚」型の社会システムを持っており、雄の個体数が一時的に減少しても集団の存続に及ぼす影響は比較的小さい。人命を守るためにどうしても必要なら、人里に降りてきた個体の射殺に躊躇するべきではない。それはクマを人間の敵にしないためにも必要なことであろう。

【歴史と生態からみた北陸のイノシシ対策・豚コレラ対策】

 イノシシは積雪と狩猟技術の発達の相乗効果によって、過去に富山県や石川県で絶滅した。2017年の推定で富山県内に1万9千頭の個体がいるとされており、さらに増加傾向にある。寿命は短く、2~3年程で世代が交代してしまう。豚コレラ対策として経口ワクチンの大量散布が提案されたが、これらのことからまったく有効性はないであろう。駆除個体の分析から、積雪の変動がイノシシの食性や繁殖に大きく影響することがわかってきた。多雪年の集中的な個体群抑制策が、現実的に有効な唯一のイノシシ対策かもしれない。

【すべての生物との共存をめざす海岸生物相研究 -どの種も取り残さない】

 重油流出事故や大陸での極めて大規模な山林火災のような広域環境破壊・汚染事故の際には、しばしばラッコや海鳥、コアラのような象徴的な動物に関心が集まるが、普通種やいわゆる有害生物を含むすべての生物との共存を目指すべきである。ナホトカ号重油流出事故をきっかけに、石川・富山両県の多種多様な海岸動植物の分布情報を収集・分析して、広域事故発生時の自然環境保全の優先順位を適正化するための研究を行ってきたので、簡単に紹介する。その発展には専門家でない一般市民を含む多くの人々の協力が欠かせない。

【「人間のため」で構わない -なぜ生物多様性を守るのか】

 生物多様性の保全の理由には、人間のために必要だからとする「人間中心主義」と、生物には人間から独立した存在価値があるとする「生物中心主義」がある。生物多様性の保全には自然や生物に無関心な、またはそれらを好まない人々も含めた全人類的な協力が必要であり、それには説明の容易な人間中心主義のほうが適しているであろう。この主義には、人間に直接役立たない生物を軽視するという問題があるが、生態系の複雑さや人間の無知を知ることと、生物利用の進歩の点から、この問題はかなり克服できると考えられる。

B. 中間山地の暮らしと豚熱(ゴーバル40年と豚熱の2年)

「簡素で 美しい 暮らしを目指して、上機嫌に 楽しく、喜んで、共に生きる。」
石原潔(山のハム工房ゴーバル代表)
1.「安心・安全・おいしい」だけに留まらない食べ物を作って届ける。山のハム工房ゴーバルの仕事。

 遺伝子組み換えでないトウモロコシ、大豆を餌に、アニマルウェルフェアを考慮して育てた豚を材料に、発色剤、化学調味料、保存料など使わずに、手仕事で丁寧にゆっくり時間をかけて加工する。まるごと仕入れるので多様な製品を手がける。手早くスライスし真空パックし冷凍した精肉から、季節に合わせた野菜ソーセージや長期間熟成の生ハムまで多くの商品がある。製品は志ある販売者や直販で食卓に届けている。

2.子育てとイベントの40年。歩み。

(人口1800人 産業と耕地少ない串原村、ほとんどが山林)

 1980年、太田夫妻の住家にて岩村昇先生の支援を受けて、武義和・桝本進・石原潔・石原眞木子がアジア生活農場ゴーバル設立。アジアの農村で働く人の交流するための共同生活の場をつくる。理念 "Living is sharing"「生きることは分かち合うこと]。

 1980年食肉製品製造許可をとりハムの製造販売を開始。株式会社愛農流通センター設立に参加。夏期は林間学校を開く。アジア保健研修所(AHI)PHD、アジア学院との交わりを持つ。NHK「明るい農村」で全国に紹介される。各地の愛農流通組織が製品を引き受けてくれる。山下政一AHI事務局長の尽力もありYWCA(名古屋、東京、京都)にも繋がりが出来る。名古屋生活クラブ、ポランの広場(ゾンネガルテン)、各地の教会や集会の応援も大きかった。武義和は愛農高校教員、石原眞木子は障害児教育に、桝本尚子は中学校教員として、それぞれ一時期関わった。桝本進は山人舎の名前で桝本楳子の書の本や桝本華子句集などを作成した。愛農高校専攻科生の受け入れも断続的におこなった。

 1987年串原食肉加工組合ゴーバル設立。串原村養豚組合(1981年養豚団地完成)と協力。農水省補助金を受け農畜産物加工処理場を1988年つくる。

 2018年4月 屋号を山のハム工房ゴーバルに変更。

 2020年10月 株式会社 山のハム工房ゴーバルに組織変更。従業員20名)

思想的背景:基督教独立学園に在学し鈴木弼美先生、桝本忠雄先生から無教会主義基督教を学ぶ。酪農学園にて三愛精神(神と人と土を愛する精神)を学ぶ。高校当時より岩村昇先生や伊藤邦幸先生らが日本の戦争責任を受け止め海外医療協力に献身する様子に影響を受け、農村での生き方を模索した。1978年頃ころから高度経済成長に沸く日本社会のなかで一歩退き、アジアの草の根の人々、都市と農村の人々の交流の場を構想した。自分たちの生活を見直し、土に根ざして本物の食べ物をつくる農場を模索。タゴールの思想にも造詣の深い太田夫妻に助けられ串原村に事業をはじめることができた。1985年から2000年にかけゴーバル聖書合宿を行った。現在は聖書集会として毎週開催。

3.豚熱 (豚コレラ)CSF

 2018年夏、岐阜市で豚熱 国内26年ぶり発生(確認9月)。

 ウイルス系統が中国由来と推定。発生農家、外国人など非難。初動の悪さなど行政非難。

 封じ込め戦略。県境に防護柵。イノシシに経口ワクチン散布。農場衛生管理基準の見直し。

 2019年 8県にひろがる。16万頭殺処分。関東地方にも拡大。

 農水省 2019年10月、一年かかって「ようやく」ワクチン接種を決める。

 背景 人的往来、物流の拡大。伝染病拡大の要因。

 農山村の疲弊。イノシシの頭数も活動領域も拡大。

 山林環境の問題。気候要因、不作。野生動物の管理不十分。環境省から猟友会まで。

 農水省。家畜保健衛生所の弱体化。輸出偏重の農業政策。

 ワクチン接種による非清浄国認定を恐れた。

 少量の豚肉輸出にこだわり、他の非清浄国からの輸入圧力も理由にした。

 岐阜県豚肉生産全国の6%。一部利権の為、少数者の切り捨てをやって恥じない。

 口蹄疫の教訓があるはずだが、マーカーワクチンの開発を怠ってきた。

 2019年7月28日 串原養豚、石原弦の農場でも豚熱発生 全頭殺処分

 2020年5月28日 養豚10ヶ月ぶり再開 母豚導入。16頭。

 2020年7月29日 母豚2回目の導入。20頭。5ヶ月齢。

 半年後母豚に。年内に母豚56頭まで増やす予定。

 肉豚出荷は2021年春以降の予定。

 飼育頭数を適正規模に抑え、アニマルウェルフェアへの取り組みを強化。

 飼育頭数を適正規模に抑え、アニマルウェルフェアへの取り組みを強化。

第II部 アースデイ・トークのご案内

アースデイ・トーク1. 「絶滅危惧種を守るために、私たちにできること」

ゲスト: 村井仁志 さん(富山市ファミリーパーク動物課・課長)

 現在地球上では、毎日数十種の生物が姿を消していると推測されています。その原因の多くは気候変動や外来生物のような人間活動の影響によるもので、結果的に人間社会にも多くの悪影響が及ぶと心配されています。その中でも、多くの個人や団体が生物の多様性を守る活動を繰り広げていて、SDGsの中でも14(海洋資源)や15(陸域の生物多様性)などに取り上げられています。里山の自然環境の保全や絶滅危惧種の保護に活躍しているとてもユニークな動物園、富山市ファミリーパークの村井仁志さんをお招きして、動物園の立場でできること、やっていることを皮切りに、いろいろな立場の「私たち」に自然環境や生物多様性守るためにできることを考えていきたいと思います。

アースデイ・トーク2.「野生動物の「害」を考える」

ゲスト: 大井徹 さん(石川県立大学・生物資源環境学部 教授、日本クマネットワーク前代表)

 富山県では2002年以来何度かツキノワグマの大量出没がありました。昨年もそれに当たり、大きな話題になりましたが、今年もブナやミズナラの凶作が伝えられ、秋の大量出没が心配されています。人身被害を起こしてしまうクマの他にも、富山にはニホンザルやイノシシなど農業被害を起こしてしまう動物もいて、イノシシやシカは自然環境への影響までも心配されています。でも、こうした野生動物を1頭残らず絶滅させてしまえ、という人は非常に少なくて、大半の方は心のどこかで動物たちとの共存を望んでいると思います。これらの動物たちを「有害」なものにしているのは何なのか、どうしたら野生動物と共存していけるのか、大型哺乳動物の生態に詳しい大井 徹さんをお招きして、こうした問題について考えていきましょう。

アースデイ・トーク3.「里山のいのち、ヒトのくらし」

ゲスト: 中村浩二 さん(石川県自然史資料館館長、金沢大学名誉教授)

  多くの野生生物のすみかである里山は、農業、林業、薪炭林の場であるとともに、都市住民の憩いの場としても大切な役割を果たしてきました。燃料革命(より便利なガス、石油の普及)、都市化の進行などにともなって、それらの価値は小さくなり、(高度成長期から1980年代くらいまで)多くの里山が乱開発によって失われてきました。(それ以降、とくに最近は)北陸地方はじめ各地では、過疎高齢化により、農地と造林地の管理放棄が深刻な問題になっています。野生動物の出没や農林業被害が問題となってきた最近では、動物と人間の生活圏の緩衝地帯としての里山の役割が見直されています。昆虫の生態学から出発して、能登半島の里山やフィリピンのSATOYAMAに関わる人々の教育に大きな成果を上げてこられた中村浩二さんをお招きして、国際的な視点も交えながら里山とそれを取り巻く人の未来について語っていただきたいと思います。


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最終更新日: 2020年9月26日